井深大と本田宗一郎


 ソニーの創立者、井深大さんが、世界に先駆け本格的なトランジスターの開発や製造に手を挙げたとき。
 基本特許料支払いの、外貨割当を通産省に申請すると、「真空管も作ったこともない者が、なにを言う」と叱られ門前払にされたが、その後のソニーの大発展を見れば、通産省の判断ミスは一目瞭然である。
写真は、井深大さん(右)と著者(平成元年二月撮影)

 昭和40年代の初め、本田技研が自動車を作るために、通産省に製造許可を願出ると、「自動車を作るなんて生意気だ。オートバイ屋はバイクを作っておれ」と言われた。
 社長の本田宗一郎氏は「その科白はウチの会社の株主になってから言え」と応じたが、尋常小学校卒の学歴であっても、資本主義の本質を把握した発言である。
 本田氏はまた、経験があるとか専門知識がある言っても、それは過去のことを知っているだけだ。未知の領域に関しては、専門家も素人と変りないと言い切る。
 だから、誰もが為し得なかった問題に関しては、その分野の第一人者だとか専門家だ素人だなどと区別しても無意味だ。
 はっきりしているのは、未知の分野では誰もが素人なのだ。だからこそ未知の領域という。
 同じ筆法で言えば、医学の分野でもこうした理不尽な区分が存在する。
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